「ラクトフェリンの殺菌効果」

 ラクトフェリンは、悪玉菌に対して、殺菌効果があるが、では、一体どうやって菌を殺すのだろうか? それは、

 悪玉菌の細胞表面と結合することで、細菌の個体維持を崩壊に導く。

 具体的に言うと、ラクトフェリンは、主にグラム陰性菌という細菌の一群に対して、殺菌作用を見せる。このグラム陰性菌には、大腸菌、コレラ菌、根粒菌など、おもに約80属ほどが確認されているが、彼らを形成している細胞壁にはある特徴がある。グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分には、リポポリサッカライド(LPS)と呼ばれる成分が関与している。
 
 リポ多糖とも呼ばれるこの成分は、血液中に入ると内毒素として作用する。

 このLPSが細菌から遊離し、循環系に侵入すると、発熱や呼吸促拍、低血圧など多彩な生活活性を発現し、場合によってはエンドトキシンショック(内毒素)などを引き起こし死亡する可能性もある。また、LPSは、サイトカインを産生し、炎症を引き起こす。
 LPSという物質自体は、経口摂取することで、体内に良い影響を与える活性物質でもあるが、どのような形で存在し作用するかが問題なのだ。
 さて、ラクトフェリンは、このグラム陰性菌の外壁の構成成分であるリポ多糖に吸着し、その膜透過性を変化させることで、グラム陰性菌の自己維持を困難にさせる。つまり、

 グラム陰性菌は、ラクトフェリンにくっつかれると、崩壊する。
 
 またグラム陽性菌に対しても、表層のリポタイコ酸にくっつくことで殺菌作用を示す。
 これが、ラクトフェリンの殺菌作用だ。

「ラクトフェリンの静菌効果」

 ラクトフェリンは、直接的に細菌を殺す作用もあるが、静菌作用も持ち合わせている。静菌作用は、細菌の活動それ自体ができない状態にしてしまうこと、だ。では、どうやって、細菌を活動不能にするのか。

 ラクトフェリンは、細菌の生育環境から必須栄養素である鉄イオンを補足することで、細菌の成長、繁殖を停止させる。

 多くの細菌は、鉄がないと繁殖できない。鉄欠乏によって、細菌は成長も繁殖もできず、やがて、死滅する。不思議なことに、この効果は、病原性大腸菌、クレブシュラ、ウェルシュ菌など、主に腸内悪玉菌に限られる。ビフィズス菌には、むしろ生育を助ける形で働くし、乳酸菌などは、鉄欲求性が少ない。
 腸内悪玉菌にたいし、このように、ラクトフェリンには、素晴らしい殺菌、静菌の効果がある。